「優れた産業技術を開発し、それを装備した製品をいち早く市場に出しても、イノベーターの競争優位と利益の獲得につながらない、あるいは獲得したはずの利益が継続しないことが多い。」
この問題について薄型テレビ、DVDプレイヤー、HDD、携帯電話、デジカメなどのデジタル機器の競争と戦略を議論している。
本書の目的は、「イノベーションを利益に結びつけ企業成長につなげるという課題解決のための方策を明らかにする」こと。
原因は、(1)経済全体のグローバル化、(2)製品アーキテクチャが摺り合わせ型からモジュラー型への変化、(3)企業ドメインが日本企業の統合型ドメインからデルのような特化型ドメインのように多様化していることによる。
それらにより、製品がコモディティ化して価値獲得に失敗している。
!!付加価値創造(p16)
ものづくりを付加価値や利益に結びつけるには、価値創造と価値獲得の視点が必要。
!価値創造
技術的イノベーションで顧客価値の高い商品を創造。
価値創造プロセスで高品質、低コスト、スピードを実現する。
!!製品アーキテクチャ
デジタル商品がモジュラー化して過当競争が起きている。
自動車は、日本企業が得意なインテグラル型で摺り合わせに高い技術が必要なため強い。
一方、PCやDVDなどは製品アーキテクチャがモジュラー化されているため他国企業に勝てない。要因としては、コスト、グローバルな仕組みづくり、プラットフォームリーダーになれないこと。
!!コモディティ化(p24)
コモディティ化の定義「参入企業が増加し、商品の差別化が困難になり、価格競争の結果、企業が利益を上げられないほどに価格低下すること」
モジュラー化はコモディティ化を促進する。
!!日本企業の価値獲得戦略
モジュールでの価値獲得とは部品やモジュールでもうけること。継続して利益を得るにはプラットフォームリーダーになることが重要。
アセンブルでの価値獲得は、中国で製造してもコスト優位性で競争するのは難しい。
デルはグローバルサプライデマンドチェーンを構築して成功しているが日本企業の成功例はない。
機能的価値でなく意味的価値により大きな付加価値を有む。iPodなど。
よって、モジュールとアッセンブルの組み合わせが有力。独自性の高いモジュールを高度に摺り合わせて付加価値の高い製品を創出。
商品ライフサイクルの最初は摺り合わせ戦略が有効だが、モジュラー化していき利益やシェアが減っていく。
!!統合型企業のジレンマ
完成品メーカーがキーデバイスを重視しそれを内製化するのは勝利の方程式だが、部品生産の利益を上げると社内需要の規模を上回るため、外販する必要があり、モジュラー化、コモディティ化するというジレンマがある。
!!松下のPDP
垂直統合型。グローバルウィナーを目指す戦略。価格競争にも勝つ。
!!デルのBTO
デルはコモディティ化を積極活用している。SGA(原価以外の費用)は10%以下。日本企業は30%程度。また、キャッシュフローを重視。部品コストの低下をリアルタイムに取り込んで製品価格を下げる。利益が大きくなりすぎたら価格を下げてコモディティ化を促進。
!!光ディスク
技術流出でなく、積極的に技術移転を行って自らコントロールして協業する。
!!中国やアジア地域の海外投資
低賃金労働力の利用ではなく、本国では到達できない量産規模を海外で達成させ、確実にスケールメリットを獲得すること。
!!サムスン、LG
日本の技術を後追いして投資競争で勝ったわけでなく、学会発表件数などで逆転していた。
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